建築雑感

2005年8月19日

イタリア-3:二つの駅舎

ミラノ駅ミラノからフィレンツェへ列車で移動しましたが、この二つの駅舎はとても対照的です。

ミラノ中央駅のプラットホーム空間(右)は良く知られた鉄とガラスが謳歌する大空間で文句無しの迫力があります。そして街に向いたファサードはうってかわった巨大な石造建築。それらに通じるものは見るものを圧倒しつつ高揚感を高めようとする意図でしょう。それに対してフィレンツェ駅舎(下)は今見れば控えめな、大地にはりつくように水平に展開したモダニズム建築。記憶によれば設計競技によってこれを設計したのは地元の建築家グループで、歴史的街並の中にあってのモダニズムのデザインが賛否両論を巻き起こしたとのこと。

フィレンツェ駅そして今、人々の動きを見てみるに、ミラノに於いては長距離列車を飲み込んだ大空間の中でこれからの旅路に夢はせる顔の人々の群れが、フィレンツェに於いては駅舎の周囲の芝生で自らの行動を思案するバックパッカーたちとともに、三々五々自然に集まり居るこの街の人達がその場の主役のようでした。

この違いは駅舎というものの二面性を表すものかもしれません。それは「旅立ちの高揚感」と「帰巣の安堵感」とでも言えるものでしょうか。少なくとも私にとってのフィレンツェ駅舎の印象はとても良いものでした。

2005年8月18日

イタリア-2:RCトラスの橋

RCトラス橋ミラノ Naviglio地区の運河沿いを散歩していて見つけた鉄筋コンクリート造のトラス橋。無骨なプロポーションでありながら斜材の角度と太さを連続的に変化させているあたりがニクい。この時は運河の工事の為か水がありませんでしたが、太鼓橋になっているのは船舶の航行のためでしょう。

RCトラスの橋と言うとパリ東駅の跨線橋(1927)が有名なようですが、細骨材の風化の具合から言ってそれよりも古いかと思われます。しかし形状から言って力学的にはトラス橋というよりはアーチ橋でしょうか。その苔むしたテクスチュアに、もはやトラスの軽快さからはほど遠い重量感を見せている姿は、もしかするとデザイナーの意図したものかもしれません。こういうものを見ると、遥か昔にこれを造った人たちの顔が見たくなります。

2005年8月18日

イタリア-1:敷石の下には

広場の電源そんなことをやっているから給料が低いのだとボヤかれそうですが、今春に事務所でイタリア中北部を旅行しました。”旅行者”としての「建築雑感」を数回にわけて書いてみます。

手始めは軽く設備のお話。露店で賑わうフィレンツェの広場で足元にこんなものを見つけました。露店に電気を供給しているボックスです。一見すると百年以上も前に敷き詰められたかに思える敷石の下に、イベント用のインフラをしっかり仕込んであちこちから取り出せるようにしてあるとは、さすがイタリアと言うべきか。これのおかげで気分よく酔っぱらっても地面をのたうつケーブルで足をとられることはありません。だいじなことです。下の方がどうなっているかは不明ですが表情もなかなかよいですね。街を歩いているとこの手のものによく出会います。