ミラノからフィレンツェへ列車で移動しましたが、この二つの駅舎はとても対照的です。
ミラノ中央駅のプラットホーム空間(右)は良く知られた鉄とガラスが謳歌する大空間で文句無しの迫力があります。そして街に向いたファサードはうってかわった巨大な石造建築。それらに通じるものは見るものを圧倒しつつ高揚感を高めようとする意図でしょう。それに対してフィレンツェ駅舎(下)は今見れば控えめな、大地にはりつくように水平に展開したモダニズム建築。記憶によれば設計競技によってこれを設計したのは地元の建築家グループで、歴史的街並の中にあってのモダニズムのデザインが賛否両論を巻き起こしたとのこと。
そして今、人々の動きを見てみるに、ミラノに於いては長距離列車を飲み込んだ大空間の中でこれからの旅路に夢はせる顔の人々の群れが、フィレンツェに於いては駅舎の周囲の芝生で自らの行動を思案するバックパッカーたちとともに、三々五々自然に集まり居るこの街の人達がその場の主役のようでした。
この違いは駅舎というものの二面性を表すものかもしれません。それは「旅立ちの高揚感」と「帰巣の安堵感」とでも言えるものでしょうか。少なくとも私にとってのフィレンツェ駅舎の印象はとても良いものでした。