『マカロニ』という映画がありました。好きな映画です。主演のマストロヤンニが老いた母を訪ねると、彼女は屋根の上の野菜畑に囲まれて、下界には何年も降りていないという風情で暮していました。そこはまるで屋上という名の大地の上のようでした。
いつの時代からなのかは分かりませんが、どうもイタリアの街は屋根の上に人が出ることを前提に造られているように思います。
『マカロニ』はナポリでしたが、上はシエナで下はフィレンツェ、ストリート側のファサードが軒を揃えたデザインになっていても奥にいけば塔屋が交錯し瓦屋根に挟まれた小さなスペースでも平らなところを造って外に出てやろうという涙ぐましい工夫が見られます。防水などは怪しいものです。しかし日本のように屋上に設備機器が並んだりそれをルーバーで隠したりという風景はついぞ見ません。それに建物の高さがそろっているのでそこに行けば地平線すら存在しています。やはり屋上は第二の大地なのです。
日本でも行政主導で屋上緑化などは少しずつ進んできましたが、場所としての生きたアイデアが必要になってくるのはこれからでしょう。


街そのものが歴史的建築物で埋めつくされたような旧市街地であっても、建築はその表情を少しずつ変えながら活力を持って生き続けています。そうした中で良く見る事ができた手法にエクステリアのインテリア化がありました。
日本でこれをやろうとしても多くの場合には既存遡及を含めて法規的な困難がありそうです。建築の長寿命化が今や誰もが考えねばならない環境的なテーマだとすれば、日本の法規制もより柔軟になっていって欲しいものです。