前回ここにホテルのことを書いてから3ヶ月経ってしまいました。やはり筆無精です。その間に新しく設計を始めることになったものもありますが、どの計画にも共通して考えていることは『利用者は何が嬉しいのか』ということです。ビジネスホテルは眠るだけの場所、ぐっすり眠れて朝食がそこそこ美味くて安ければそれでよい。というのが従来の考えかもしれませんが、そういうことではなく、それ以上のものができないかということです。
ここで前回の続きになりますが、ひとつは『仕事をしたくなる客室』という切り口を考えました。従来のビジネスホテルには無かった大きな窓に沿った客室間口一杯のワークデスクは、たくさんの書類を広げて『仕事』が出来ます。デスクは作業するための場所であって、テレビ台やポット置場や手荷物置場ではないのです。出張の宿は飲んで帰って寝るだけという考えは過去のもの。ですからできればそこは打合わせスペースとしても使いたい。全ては客室面積とのせめぎ合いですが、死んでいる空間を使いメリハリの効いた空間設計をすれば、たとえ13平米台の客室でも3mのデスクや二人で打合わせが出来るワークスペースが出来てきます。
そしてそのようにして形になる客室の空間は、あながちビジネス的とも言えません。例えば集合住宅では多用される逆梁によって天井面まで開けられた開口部からは、その街の風景とともに寝ながら星空を眺められるほどの開放感があるのです。