建築雑感

2005年8月25日

イタリア-6:鎧窓に思う

どの街に行っても窓を見ればヨロイマド。木製の外付型で、最も多いのは写真のような観音開きですが、その他にも様々な形態があります。写真にはありませんが秀逸なのは上部のヒンジで蔀(しとみ)戸のように庇状にはね上げるものでしょう。「はね上げ」と「開き」を組み合わせたものもあります。これらの鎧窓は通風を採りながら日射を制御する極めて機能的なものです。

もちろん直接比較する事はできませんが、日本では、本来必要だった深い”のき”の影が薄くなってしまって以来、日射に関して少し無神経なように感じます。特に夏期の熱負荷を減らす為にはガラスそのものの性能をアップさせるよりもその外側で日射を受けるのがいちばん。

最近ではサッシ廻りの防犯性能を強化するというような流れもありますが、そんなことも併せて考えると鎧窓は良い方法なのではないでしょうか。。。『田浦の家』では可動ルーバー付の折雨戸を使いましたが、集合住宅などで使えるより安価で汎用性の高い製品が望まれます。
窓

2005年8月23日

イタリア-5:インテリア化

ショップ街そのものが歴史的建築物で埋めつくされたような旧市街地であっても、建築はその表情を少しずつ変えながら活力を持って生き続けています。そうした中で良く見る事ができた手法にエクステリアのインテリア化がありました。

右は中庭部分にガラスの屋根を造って増築されたショップで、同様のものは他にもいくつか見られます。

下はミラノの Fourseasons Hotel ですが、修道院の回廊部分を良く考えられたディテールのガラススクリーンでインテリア化しています。
こうした手法は「外壁」が内装になるという面白みだけでなく時代が要求する機能への転換という意味でとても効果的だと思いますが、フォーシーズンス日本でこれをやろうとしても多くの場合には既存遡及を含めて法規的な困難がありそうです。建築の長寿命化が今や誰もが考えねばならない環境的なテーマだとすれば、日本の法規制もより柔軟になっていって欲しいものです。

2005年8月21日

イタリア-4:街の色

フィレンツェ鳥瞰     シエナ鳥瞰

フィレンツェとシエナは近くに立地していますが、歩いていると街の空気がかなり違います。同じような天気でもシエナには、フィレンツェよりも湿ったような陰を感じる空気があって、それが独特の居心地の良さを生んでいるように感じます。

歩いているときには、それが街路の構成などによる形態から来る感覚だと思っていましたが、帰国後にそれぞれの街の塔の上から撮った写真を眺めていて気づきました。アイレベルでは似たような印象であっても全体としての『壁の色』が違います。同じような細い街路であっても白い壁面に囲まれたフィレンツェの街ではそもそも下まで到達する光の量が多いのでしょう。建物の色彩はそれを見たときの印象とは別に光の環境にも強く影響します。それにしても隣町でこの違い、きっとそこで育った人間の気質にも影響したでしょう。いまさらのようにイタリアが都市国家の集合体であることを感じます。