建築雑感

2007年2月25日

楽しい竣工検査

設計監理者の竣工検査というのは、楽しさと辛さが半々ということが多いものです。楽しさはもちろん完成した姿をじっくりと見られる楽しさ、辛さの方はここには書ききれないいろいろです。ところが先日かなり楽しい竣工検査がありました。Arte哲学堂という低層集合住宅で、私の立場は『企画の一員』にすぎず『設計・監理者』ではなかったので、そのせいもあるのかもしれません。しかし大きな理由はやはり出来の良さだったかと思います。設計監理する場合に比べれば遥かに少ない機会ではありましたが、工事事務所での細かな納まりの打合わせなどにも出席し、関係する方々の共通の価値観、それに向かう熱意、そういったものが形になったということが良く判りました。検査開始時にはもちろん厳しい目をしていた関係者の皆さんも、終了に近づくにしたがって『なんだか見学会のようになってきましたね。』となりました。私が常々思うのは、建築はたくさんの人の手によって造るものであるので、それにかかわった多くの人が同じ目線とはいかなくとも同じ目的意識とやりがいをもってかかわったものが、結果として良い建築になるということなのですが、そんなことを再認識した日でもありました。

2007年1月18日

ビジネスホテル – 2

前回ここにホテルのことを書いてから3ヶ月経ってしまいました。やはり筆無精です。その間に新しく設計を始めることになったものもありますが、どの計画にも共通して考えていることは『利用者は何が嬉しいのか』ということです。ビジネスホテルは眠るだけの場所、ぐっすり眠れて朝食がそこそこ美味くて安ければそれでよい。というのが従来の考えかもしれませんが、そういうことではなく、それ以上のものができないかということです。

ここで前回の続きになりますが、ひとつは『仕事をしたくなる客室』という切り口を考えました。従来のビジネスホテルには無かった大きな窓に沿った客室間口一杯のワークデスクは、たくさんの書類を広げて『仕事』が出来ます。デスクは作業するための場所であって、テレビ台やポット置場や手荷物置場ではないのです。出張の宿は飲んで帰って寝るだけという考えは過去のもの。ですからできればそこは打合わせスペースとしても使いたい。全ては客室面積とのせめぎ合いですが、死んでいる空間を使いメリハリの効いた空間設計をすれば、たとえ13平米台の客室でも3mのデスクや二人で打合わせが出来るワークスペースが出来てきます。

そしてそのようにして形になる客室の空間は、あながちビジネス的とも言えません。例えば集合住宅では多用される逆梁によって天井面まで開けられた開口部からは、その街の風景とともに寝ながら星空を眺められるほどの開放感があるのです。

2007年1月18日

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