建築雑感

2024年10月19日

ジャズコンサートを主催

設計した大島記念音楽堂でのジャスコンサートを主催しました。演者は、小川が大ファンのボーカルの情家みえさんとピアノの遠藤征志さん。フライヤーのデザインは私。都内のライブハウスでお二人をスケッチしたものです。

1ヶ月前には予約満席。当日は、いやあ感激しました。ありがとうございました。

 

2020年4月4日

再開発計画監修業務受託について

再開発の仕事

私の事務所では、今年(2020年)の1月から、第一種市街地再開発事業の計画推進業務(監修業務)を開始しています。場所は、東京都港区六本木三丁目北西部の約2万㎡のエリアです。

これについては、経緯や自分の考えを最初に表明しておく必要があると思いましたし、今後は訊かれることも多そうなので、長文になりますが書いておきます。

実は、私はこの地区に住まいがある地権者(共同住宅の区分所有)で、今は再開発準備組合の組合員です。ですがそれ以前の、10年以上前からここに存在する「まちづくり協議会」の会員でもあります。この協議会は六本木3丁目3〜5番の地権者と住民によるもので、その発足の目的には『魅力ある街に発展させるための、まちづくりのあり方を研究協議する』とあります。この”意識の盛り上がり”は、隣の街区の再開発(現在TV東京の入居しているグランドタワーなど)の計画立ち上げが契機となって起ったものでした。つまり、当初は”再開発に対して物申す近隣”からスタートしたとも言え、元々再開発を目指した組織ではありません。その後、ユニークな「提案型まちづくりルール」で港区まちづくり条例による第1号の認定を受け、現在に至っています。

上記の認定後、協議会では港区まちづくりコンサルタントでもある連健夫氏の指導による研究会などを重ね、その中で街が抱える問題点も徐々に浮き彫りになったのですが、そのひとつに「崖」がありました。建築関係者なら御承知のように「安全性の確認出来ない擁壁や崖」は、建築する者(地権者)にとっては大きな障害で、事実上建築出来ない場合もあります。この街区は全体が斜面地で高低差は16mもあるため、そのような事実上建築出来ない場所がかなり多く、結果として、放置された崖や、空き地・空き家の増加を招いていました。それは地権者の不利益にとどまらず防災上の問題でもあり、周辺も含んだ街の将来を暗くするものだと皆が気付いたのです。この問題は、崖の上下の地権者が共同で建て替えるなどの場合には経済的合理性をもって解決できる可能性がありますが、そのようなことは普通は起りません。再開発であれば当然にそうした一体の計画が可能です。

そのことが認知されつつあるころに、となりの再開発で主体であったディベロッパーが我々協議会の街区でも表立って動き出しました。協議会は大きな判断を迫られましたが、「再開発という手法については賛成も反対もしない」という方針を総会で採択しました。さらに、暗に『再開発準備組合に組織を移行したらどうか』と誘導する行政の意向に従うこともなく、先々立上がる再開発組合とは別組織であることを堅持しながら、より良い計画の方向性を模索するという動きが始まりました。巨大プロジェクトを真の住民参加で、周辺も含めた参加で進めるためには、開発事業者に取り込まれず、かと言って敵対構図をとるのでもなく、出来るだけ計画が白紙に近い段階から協議・調整することが必要と考えたのです。ここに於いて、協議会の「まちづくりルール」は、塀を立てたり自販機を置いたりするのと同様の手続で、巨大な再開発に対しても適用されることになりました。

当街区は3つの町会にまたがっており、それぞれに個性豊かな3人の町会長さんが仕切っていらっしゃるのですが、上記総会決議が終わったころに、その3人の町会長さんから「再開発の事業者に対して、私を設計監修者として推薦したい。」という、思いもよらぬお話しを頂戴しました。開発面積の2万㎡は総延床だと10万㎡を超える規模。うちのように小さな事務所ではあまり前例が無いかもしれませんが、個人的には前職の三上さんの事務所で、敷地7万㎡の住宅団地や、同3万㎡の複合施設のマスタープランをやっていたので、規模的にはわからないスケールではありません。「ここまでおっしゃっていただけるならやってみたい。」と思いました。やるからには少なくとも7、8年は本気で取り組まないと恥ずかしくない仕事は出来ませんから、残りの建築家人生を突っ込むくらいの覚悟が必要なのですが、やらせていただくことにしたのです。

「地権者が監修業務など、前例が無い」、と事業者も面食らっていましたが、事務所の作例も見てもらい、たいへんだったであろう社内調整の結果、おかげさまで契約にこぎつけました。

都市型の再開発は、容積割増によって建設費を生み出すものですのでマッスが巨大になることは宿命です。その巨大さの中でもヒューマンスケールを実現すること。法の理念である「公共の福祉に寄与する」ことを地域のアイデンティティの中で考えること。そしてそれらすべてが持続可能であることを折り込んで行くことが必要であり、たんなるデザインだけでなくエンジニアリング(実施設計者)との協力なくしては不可能でしょう。実施設計者はまだ未定ですが、都市計画コンサルタントは日建設計さんに決まりましたのでまずは御一緒に。30年暮らしていた街だからわかることを活かして考えていきたいと思います。

 

まちづくり協議会のニュースに掲載された、再開発準備組合設立に関係した記事。

2016年3月28日

リノベーションの照明器具

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昨年末から設計監修させていただいている初めてのリノベプロジェクト。鎌倉市の景観重要建築物に指定されている「旧安保小児科医院」の住宅へのリノベーションは、調査・設計が順調に進み、昨日の長い打合わせで構造的な部分と住宅としてのプランニングはほぼ終了。5月着工の目処がついたように思う。しかし「やってみないと判らない」ことも多々あり、電気設備もそのひとつ。約二年間受電していない建築なのだ。もちろん使えるものは生かしたい。こんな照明もこんなスイッチも、二年前まで使っていたのだから。。。
文化財としての保存と、住宅としての居住性や利便・安全の確保のバランスがおもしろくも難しい。なにしろ工事費の負担は、一部補助金があるとは言え、そのほとんどが個人なのだ。