
フィレンツェとシエナは近くに立地していますが、歩いていると街の空気がかなり違います。同じような天気でもシエナには、フィレンツェよりも湿ったような陰を感じる空気があって、それが独特の居心地の良さを生んでいるように感じます。
歩いているときには、それが街路の構成などによる形態から来る感覚だと思っていましたが、帰国後にそれぞれの街の塔の上から撮った写真を眺めていて気づきました。アイレベルでは似たような印象であっても全体としての『壁の色』が違います。同じような細い街路であっても白い壁面に囲まれたフィレンツェの街ではそもそも下まで到達する光の量が多いのでしょう。建物の色彩はそれを見たときの印象とは別に光の環境にも強く影響します。それにしても隣町でこの違い、きっとそこで育った人間の気質にも影響したでしょう。いまさらのようにイタリアが都市国家の集合体であることを感じます。
ミラノからフィレンツェへ列車で移動しましたが、この二つの駅舎はとても対照的です。
そして今、人々の動きを見てみるに、ミラノに於いては長距離列車を飲み込んだ大空間の中でこれからの旅路に夢はせる顔の人々の群れが、フィレンツェに於いては駅舎の周囲の芝生で自らの行動を思案するバックパッカーたちとともに、三々五々自然に集まり居るこの街の人達がその場の主役のようでした。
ミラノ Naviglio地区の運河沿いを散歩していて見つけた鉄筋コンクリート造のトラス橋。無骨なプロポーションでありながら斜材の角度と太さを連続的に変化させているあたりがニクい。この時は運河の工事の為か水がありませんでしたが、太鼓橋になっているのは船舶の航行のためでしょう。